山邉ブログ

2010.07.28更新

今年度の税制改正では「グループ法人税制」が注目されていますが、
その中の一つに中小企業特例の制限があります。

これは、平成22年4月1日以後開始事業年度より、
資本金が5億円以上の大法人と完全支配関係にある法人(100%子会社や孫会社など)については、
その子会社等の資本金が1億円以下であったとしても、中小企業向けの特例は適用しないというものです。

大法人の100%子会社等については、具体的には

1.800万円以下の法人所得について、18%の軽減税率が使えなくなる。
2.特定同族会社の場合には留保金課税の適用対象となる。
3.一括評価債権の貸倒引当金の繰入限度額計算は、実績繰入率による方法しか認められなくなる。
4.交際費は全額損金不算入となる。
5.欠損金の繰戻還付ができなくなる。

といった影響が出ることになります。

グループ法人課税はその名の通り、完全支配関係にあるグループ企業を一つの法人と捉えて課税を行うという制度であるため、担税力のある大法人の100%子会社等も大法人と同様の課税を行うという意味においては趣旨に適っているといえます。

大法人の100%子会社等については、以後これらの影響に注意を払う必要があります。

投稿者: 山邉洋税理士事務所

2010.07.22更新

 平成18年度の税制改正で導入された「特殊支配同族会社における業務主宰役員給与の損金不算入制度」は、平成22年度の税制改正によって廃止されました。

 中小企業の経営者にとっては大変喜ばしいことではあるのですが、まだ手放しでは喜べる状況ではないようです。


 この制度は、株主も会社経営者も親族で占められているような法人と、個人経営者との間での課税上の不均衡を是正するために導入された制度とされていましたが、そのあり方には様々な批判を浴びてきました。税理士会でも制度の廃止を表明し続けてきました。


 実は、昨年末に閣議決定された「平成22年度税制改正大綱」の中で、この同族会社と個人経営者との課税上の不均衡とされる点について、次のようなことを述べているのです。

「・・・(中略)・・・給与所得控除を含めた所得税のあり方について議論をしていく中で、個人事業主との課税の不均衡を是正し、「二重控除」の問題を解消するための抜本的措置を平成23年度税制改正で講じることとします。」

 「二重控除」問題をどうしても解消させたい意図が強く表れています。


 この懸案事項を所得税の側面から解消するのか、それとも法人税の側面から解消するのか分かりませんが、年末に「税制改正大綱」が発表されるはずですので、その動向には注目したいと思います。

 

投稿者: 山邉洋税理士事務所

2010.07.16更新

本日は、譲渡損益の繰り延べの最終回です。
譲渡損益の戻し入れについてお話したいと思います。


前回も触れましたが、資産を取得した法人側において、
対象資産の譲渡・償却・評価替え・貸倒れ・除却などの事由が生じた場合には、
譲渡した法人側で繰り延べられていた譲渡損益の戻し入れ処理を行わなければなりません。

しかし、上記事由は対象資産を取得した法人側でのことなので、
対象資産を譲渡した側ではその事実を知らせてもらう必要があります。
法人税法では通知義務を規定し、対象資産に一定の事実等が発生した場合には、
取引の相手方にその事実が発生した旨を通知することにしています。


なお、戻し入れ事由と戻し入れ額については、次の通りとなります。

 ・ 戻し入れ事由

    1.対象資産の譲渡、貸倒れ、除却
    2.適格分割型分割による対象資産の移転
    3.会社更生法等の規定による評価替えがあり、評価益が益金算入された場合等
    4.会社更生法等の規定による評価替えがあり、評価損が損金算入された場合等
    5.連結納税の開始に伴う時価評価資産に該当したとき
    6.完全支配関係を有しなくなったとき
    7.譲受法人が公益法等に該当することとなったこと

       ⇒ 1~7の場合 
          これらの事由が生じた場合は繰り延べた譲渡損益全額(以下「A」)を戻し入れします。

    8.譲受法人側において、減価償却資産又は繰延資産にかかる償却費を損金算入したとき
 
       原 則 :  A × (譲受法人の償却費) ÷ (譲受法人の取得価額)
       簡便法 :  A × (譲渡法人の事業年度の月数) ÷ (譲受法人で適用する耐用年数×12※)
                ※ 繰延資産の場合は効果の及ぶ期間の月数
        ⇒ このいずれかの方法により計算した金額を毎期、戻し入れしていきますが、
          簡便法を採用する際は、譲渡事業年度の申告書にその明細を記載しなければなりません。

    9.対象資産に該当する有価証券を譲渡したとき

        ⇒ 譲渡した数に対応する部分の金額を戻し入れします。

   10.償還有価証券について、調整差益又は調整差損が益金又は損金に算入されたとき

        A × 事業年度の月数 ÷ 償還日までの月数
        ⇒ この金額を戻し入れします。

投稿者: 山邉洋税理士事務所

2010.07.14更新

本日は、譲渡損益の繰り延べの対象となる資産についてお話します。


対象となる資産は、次の資産をいいます。
 ・ 固定資産
 ・ 土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除きます。)
 ・ 有価証券
 ・ 金銭債権
 ・ 繰延資産

ただし、次の資産は上記の対象資産から除かれます。
 ・ 売買目的有価証券
 ・ 譲受法人において売買目的有価証券とされる有価証券
 ・ 譲渡直前の帳簿価格が1000万円未満の資産

なお、帳簿価格が1000万円未満であるかどうかの判定は、次の区分によります。
 . 金銭債権    ⇒ 債務者ごとに判定
 . 建物       ⇒ 一棟の建物ごとに判定
               マンション等の区分所有建物の場合は住戸等ごとに判定
 . 機械及び装置 ⇒ 一の生産設備又は一台あるいは一基ごとに判定
                (通常、一組又は一式として取引される場合は一組又は一式で判定)
 ・ 土地等      ⇒ 一筆ごとに判定  
              (一体として事業供用されている一団の土地等は、その一団の土地等ごとに判定)
 ・ 有価証券    ⇒ 銘柄ごとに判定
 ・ その他の資産 ⇒ 通常の取引の単位ごとに判定

繰り延べられていた譲渡損益は、資産を譲り受けた法人側において、対象資産の譲渡・償却・評価替え・貸倒れ・除却などの事由が生じた場合には、その事由が生じた日の属する譲受法人の事業年度終了の日の属する譲渡法人の事業年度において、戻し入れ処理をすることになります。

次回は、この戻し入れの処理についてお話します。

投稿者: 山邉洋税理士事務所

2010.07.08更新

本日は「グループ法人税制」の続きです。

前回省略した特定の支配関係についてお話します。


 前回の文中の「特定の支配関係」とは税務上「完全支配関係」といい、次のような関係をいいます。

  (1) 一の者が法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係
  (2) 一の者との間に上記(1)の関係(当事者間の完全支配関係)がある法人間の相互の関係

しかし、これではあまりにも分かりずらいと思いますので、具体例を挙げてみます。


☆ 一の者がA社の株式の全部を保有する場合の一の者とA社との関係
   
   一の者は個人である場合と法人である場合が考えられますが、
   譲渡損益の繰り延べは法人同士の国内取引に限定されていますので、
   完全支配関係であっても、個人と法人との取引の場合は従来通りの取り扱いとなります。

  なお、一の者が個人の場合はその個人だけではなく、
  ・ その個人の親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)
  ・ その個人と事実上婚姻関係と同様の事情にある者
  ・ その個人の使用人
  ・ その個人から金銭等を受けて生計を維持している者
  ・ これらの者と生計を一にするその者の親族
  も含まれることになります。

  例えば、本人がA社の株式の全部を保有し、その妻がB社の株式の全部を保有する場合の
  A社とB社の取引も対象になります。

☆ 一の者がA社とB社の株式の全部を保有する場合のA社とB社の関係

   同一の株主に支配されているA社とB社が対象資産を売買した場合には、
   譲渡損益の繰り延べが適用されます。


☆ 上記の他にも、例として
  
  ・ 一の者がA社の株式を100%保有し、B社の株式を30%保有。
    A社はB社の株式の70%を保有している場合のA社とB社との関係

  ・ X社がA社の株式を100%保有。
    A社がB社の株式を100%保有する場合のX社とB社との関係

  などのケースも譲渡損益の繰り延べの対象になります。

次回は対象資産についてご案内いたします。


投稿者: 山邉洋税理士事務所

2010.07.06更新

「税制改正」なる言葉は皆様もご存知かと思いますが、
税理士は皆この税制改正に大なり小なり振り回されます。


なぜこうも毎年改正しなければならないのか、
もっと皆に分かりやすいシンプルな税制は作れないものなのかと、
常日頃思っています。


この税制改正により、今まで当然だったものが当然ではなくなったりします。
納税者の方が喜ぶような改正なら良いのですが、
増税となるような改正では対応策を練らなければなりません。
中にはどうにもならないこともあります。


今年の税制改正の話題の一つが「グループ法人税制」です。
ようやく細かな運用部分も出揃ってきました。

この制度の一つに、法人間の売却損益の繰り延べがあります。
これは、平成22年10月1日以後の取引から適用されます。

これは、特定の支配関係にある法人間の固定資産などの売買については、
その資産を売却した法人側において、その売却益や売却損を税務上繰り延べるというものです。
つまり、一旦はその損益はなかったことにしてしまうわけです。

ただし、この売買により資産を取得した法人がその資産を譲渡したり、
どちらかの法人がグループから離脱したような場合は、
譲渡損益が繰り延べられていた法人はその時点で、
その損益を法人税の計算において計上することになります。

特定の支配関係や対象資産の詳細についてはまた後日ご案内いたします。

投稿者: 山邉洋税理士事務所

2010.07.02更新

九段下の税理士です。

この度HPを立ち上げました。

皆様の役に立つ充実した内容にしていきたいと思います。
特に税制改正についてはいち早くお届けできるようにしたいと考えております。

ご相談は山邉洋税理士事務所まで。

どうぞよろしくお願い致します。

投稿者: 山邉洋税理士事務所

税務関連・相続のご相談は TEL:03-3261-2363 メールでのお問い合わせはこちら
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